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中国で北京市や遼寧省を中心に、小児らの呼吸器感染症が流行している。
中国政府は、インフルエンザやマイコプラズマ肺炎など既知の疾患であるとして、通常の冬季の流行だと説明している。新たな病原体も確認されていないという。
だが、詳細な説明とは言えず、各国が懸念するのは当然である。中国政府は正確なデータを整え、速やかに事実関係を公表すべきだ。
新型コロナウイルスが中国・武漢市で広がった当初、中国政府は事態を隠蔽(いんぺい)し、対応が遅れた。その結果、世界は爆発的な新型コロナ感染症の流行に見舞われた。
現在中国で流行中の呼吸器疾患は、発熱はあるがせきはなく、胸部エックス線検査で陰影があるという。一部では病院がパンク状態になったと報じられている。コロナ禍を彷彿(ほうふつ)させるだけに、日本でも不安に感じている人は多いはずだ。
日本政府は新型コロナ禍で後手に回ったことを思い起こし、もっと危機感を抱いて対応に当たってもらいたい。台湾の保健当局は空港や港湾の検疫での警戒を強化し、中国への渡航者にはインフルエンザや新型コロナのワクチンを接種するよう促している。日本は検疫を強化しないでいいのか。
今年9月には感染症対応の司令塔となる「内閣感染症危機管理統括庁」が発足した。11月には初動を確認する訓練をした。ただ、今は危機が起きるかもしれないと考えて行動するときである。厚生労働省など関係省庁と連携し、情報の収集と国民への発信に努めるとともに、効果的な水際対策をとることが、重要である。
一方、世界保健機関(WHO)は中国側に強く情報の開示を求めなければならない。
WHOは11月23日、中国の保健当局と電話会議を行った。新たな病原体や異常な臨床症状が出ておらず、既知の病原体による呼吸器疾患が増加しているとの報告を受けたという。WHOは中国への渡航者に対し、特別な措置は求めていない。
聞いた話をうのみにするだけでは感染症への備えにはならない。新型コロナ禍での反省を踏まえ、情報の隠蔽は決して許さないという強い姿勢で中国に臨んでほしい。
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2023年12月4日付産経新聞【主張】を転載しています